ヘルシープログラマ ―プログラミングを楽しく続けるための健康Hack
- 作者: Joe Kutner,Sky株式会社玉川竜司
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2015/07/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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感想
本書はプログラミングを職業とする人が、一日中座り続けるという習慣から慢性的に運動不足に陥ることの危険性や、よく引き起こす疾患の事例とその対策について説明している。一方、タイトルから匂い立つ"プログラマは如何にして健康になれるか“というような方法論だけにとどまらず、単にプログラマとしてより良いパフォーマンスを発揮するためにどのように身体と付き合うべきかということも書いてある。
私は大学の図書館でたまたま本書を見つけ、また最近ではタイピングによって右手首に負担をかけていることを認識していたので手に取ったが、本書の前半で述べられている
- 「習慣」そのものについて
- 脳と身体の関係について
- プログラマがよく引き起こす疾患について
などのトピックは、今現在なんらかの疾患に陥っている人や、いかにも不健康な見た目をした職業的プログラマだけでなく、デスクワークを日常的にする人なら誰が読んでもためになると感じたのでおすすめしたいと思った。
特に私の印象に残っているのは、ウォーキングが脳にもたらす効果について説明した2章である。1章で既に脳と身体のつながりについて触れられ、物理的な健康が頭脳に対して直接的にメリットをもたらすこと
が強調されている。そして2章では、フェルマーの最終定理に8年間注力し、実際にその証明を成し遂げたAndrew Wilesを例に、作業の前後にウォーキング(エクササイズ)を行うことで集中力、記憶力、創造力を高めることができると述べられている。
これは、プログラマがコードを夜遅くまでハックしたり、最新の技術書を読んだりすることと同様に、ウォーキングが我々の能力を強化するための最高の方法の一つであることを示している。
それ以外にも、習慣のメカニズムやスタンディングデスクの真実を知ることも出来る。これらは多くの人々が関心のある一般的なトピックだと思う。最後に、本書で紹介されていた健康のユニットテストに対する自分の状況をメモして、今後も意識したいと思う。
健康のユニットテスト
- 踊り場まで階段を上がると息が切れるか
- 1時間以上立ち上がることなく座り続けることが、日常的にあるか
- 昨年、仕事に差し支えるほどの腰痛、首痛、肩痛、手首痛が生じたことがあるか
- 先週、コンピュータの画面を見た時に、ドライアイ、目の充血や炎症、あるいは目の焦点を合わせづらくなったことがあったか
- 先月、苦しくなるほど食べすぎたことが複数階あったか
- 今日、直射日光に当たった時間は10分以下だったか
- 過去5年間に、虫歯の数は増えたか
- 見をかがめて靴紐を結ぶのは苦しいか 過去5年間でズボンのサイズが明らかに大きくなったか
目次
1章 変化を起こそう 2章 健康のブートストラップ 3章 椅子よさらば? 4章 アジャイルなダイエット 5章 頭痛と眼精疲労の対策 6章 腰痛への対策 7章 手首痛への対策 8章 実践的なエクササイズ 9章 個室の外で考えよう 10章 健康のリファクタリング 11章 チームを作ろう 12章 進め、健康なプログラマ
追記
メモ。
習慣とは
MITのマウス(ねずみ)を用いた実験により習慣にはいかのような3要素があることが受け入れられ始めている。
- キュー(きっかけ)
- ルーチン(決まった作業)
- 報酬
すなわち習慣とは以上のような要素をみたすものであるとも言える。よって何か新しい習慣を“始める”ときには以上の要素を考慮して活動を規定する必要がある。一方習慣を“変える“コツは、上記の三要素の内(習慣を変えるために)ルーチンを変更した時、キューと報酬はそのままに保つことである。よって変えようとする習慣のキューと報酬を特定することが大切。
座っていることと立っていること
座って作業することが健康に良くないことと同じように、誤解を恐れずに言えば、立って作業することも健康に良くないと本書では述べられている。これはAlan Hedge博士の研究結果を基にした主張であるが、立ちっぱなしによって循環系に負荷が加わるため、アテローム製軽動脈硬化症、静脈瘤、血餅を発症するリスクが高まると言われている。
しかし、スタンディングデスクを用いて作業を行うことにより、1時間あたりの消費カロリーを50キロカロリーを増やすことができるというメリットがある。これは座っていることに比べるとあなたの体重を保つことに貢献する。
眼精疲労を軽減する方法
パソコンを見続ける上で眼精疲労は避けられない問題。特に眼鏡やコンタクトを着用している人は少なくとも1年に一回定期検診に行くことは必須である。その上で普段から心がけると良いのは以下である。
- ディスプレイとの距離を50cmから1mに調整すること
- 室内の明るさとディスプレイの明るさの差を小さくすること
- 可能であればブルーライトをカットすること
- 20分毎に遠く(6メートル先)のものを見ること
- 同じく20分毎にゆっくりまばたきをして目の乾燥を防ぐこと
手首痛を軽減する方法
まず注意したいのは「一日7時間以上タイピングをする人でも、一般的な場合に比べて毛根間症候群(手首痛の疾患)を発症する傾向は特に強くない」ということである。よっておそらく手首痛になるような悪習慣(姿勢、タイピングなど)を持っていること自体が原因であると考えることが出来る。
手首痛を改善するためのエクササイズにはジャズハンズ
、シャドウパペット
、エジプト人
、ショルダーシュラッグ
といったものが本書では紹介されている(内容は割愛)。
個人的な対策として、自分は右手首に痛みを感じているので、右手のタイピング動作を見直す。特に、右手範囲の上段(( ) 0 - ^ ¥)と下段(, . / _)はプログラミングでよく使うにも関わらずタイプが苦手な場所なので、正しい方法でタイプをするようにする。